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VESSEL GENERAL PERMIT

海上の救命艇
2013年12月以降、米国の水域では「環境を破壊しない潤滑剤」の使用を義務付け

 

米国環境保護庁(EPA)はVessel General Permit(VGP)の新しいバージョンを公表しており、2013年12月19日に発効しています。発効日以降、「米国の水域」に寄港するあらゆる「船舶」は以下の義務を負います。

  • (米国環境保護庁の)Vessel General Permit (VGP)を取得する
  • すべての接水部に環境を破壊しない潤滑剤を使用する(技術的に不可能な場合を除く)

半水中掘削リグおよび掘削船といったMODU(移動式海洋掘削装置)にはVGPの取得が義務付けられています。

なぜ変更されるのですか?

この変更は、(事故による漏出ではない)潤滑剤の排出が海洋エコシステムにもたらす影響をEPAが認識したことがきっかけとなりました。2013年度VGPは、鉱物油ではなく潤滑油が海洋に入る可能性のあるあらゆる用途でEALの使用を義務付けています。これは、EALの場合、あらゆる用途で環境への影響を大幅に抑制できる可能性があるからです。

この法律は、建造年に関係なく、長さが79フィートを超える大半の商用海洋船舶が対象となります。例外もあり、EPAのウェブサイトに対象となる船舶と対象とならない船舶に関する詳細が掲載されています。79フィート未満の商用船舶の大半は、発令とともにEPAのsmall Vessel General Permit (sVGP)(米国環境保護庁の小船舶環境規制)の対象になります。詳細は、http://water.epa.gov/polwaste/npdes/vessels/Vessel-General-Permit.cfmをご覧ください。

米国の水域に入る前にEPAに意向通知書(Notice of Intent:NOI)を提出します。

一般に、電子的なNOIは7日以上前に、書面によるNOIは30日以上前にEPAに提出する必要があります。

VGPから、NOIの写しと、その適用方法や提出締切についての詳細を提供しています。いったん交付されると許可は5年間継続しますが、EPAに年次報告書を提出して遵守状況を明らかにしなければなりません。

EPAはEAL(環境配慮型潤滑油)について、生分解性であり、毒性を最小限に抑え、生体内蓄積性がない潤滑油であると定義しています。この定義には、OSPAR、Blue Angel、European Ecolabel、Nordic Swan、Swedish Standard SS 1554701に基づいて分類された製品も含まれています。製品は、上述の分類のひとつに適合するか、EPAが規定した生分解、生物蓄積、毒性の基準に適合すればEALとして分類されることになります。

Castrol BioStat、BioBar、BioTac製品群はOSPAR(オスロ・パリ条約)に基づく登録があり、US 2013 VGP EAL基準に適合しています。

EAL(環境配慮型潤滑油)を使用しなければならない「接水部」には、可変ピッチプロペラ、スラスターギヤーフルード、外輪船(バドル船)推進器、スターンチューブ、スラスターベアリング、スタビライザー、ラダーベアリング、アジマススラスター、推進系ポッドの潤滑、ワイヤーロープ、浸水する機械設備が含まれます。また、航海中に水に接触する(水に浸る)デッキ上のあらゆる設備および、湿式排気を生成する2ストロークディーゼル船内エンジンに使用される潤滑油も含まれます。

この許可において、「技術的に不可能」とは以下のように定義されています:

  • 指定された用途で承認されたEAL製品が存在しない
  • あらかじめ潤滑された状態で提供される製品である(例:製造時に寿命期間にわたる潤滑が施されるワイヤーロープで、製造時に使用できるEALがない)
  • 寄港する港でメーカーの仕様に適合するEALが入手できない
  • EALの仕様に切り替えるには、次回の乾ドックまで待たなければならない

EALの使用が技術的に不可能な場合は、記録書面でその理由を説明するとともに、環境的に受容されない潤滑剤の使用について船舶の年次報告書(Annual Report)に記載する必要があります。

EPAは、船舶事業者によるEAL使用の自己報告を信頼しています。事業者は、接水部で使用されるすべてのEALについて船上で安全データシート(MSDS)を記録する必要があります。

事業者はまた、EAL(環境配慮型潤滑油)が分類プログラム(例:DfE、OSPAR、Ecolabel)に基づいて登録されているか否かを文書化する必要もあります。また、EALの使用が技術的に不可能な場合は、その理由を記録する必要もあります。

米国沿岸警備隊は船舶に対する無作為検査を実施し、遵守されているか検査します。違反した場合は、その重大性と違反頻度に応じ、書面による警告から罰金までさまざまな措置が講じられます。

Castrol BioStat、BioBar、BioTac製品群はOSPAR(オスロ・パリ条約)に基づく登録があり、US 2013 VGP EAL基準に適合しています。

Small Vessel General Permit (sVGP)(米国環境保護庁の小船舶環境規制)は現在改訂中です。sVGPは2013年夏に発布されると見られ、その要件は2014年12月19日に発効することになります。

sVGPは、(上記で定義した通り)米国の水域を航行する、レクリエーション船と軍艦を除く79フィート未満のすべての船舶に適用されます。しかしながら、Vessel General Permitに基づく許可を既に得ている小型船舶はSmall Vessel General Permitに基づく許可を得ることは義務付けられていません。たとえば、大型船舶の救命ボートは「母船」のVGP許可に基づく許可を受けることになります。

sVGPにおいて、船舶は油(油性混合物も含む)を、有害になる可能性がある量、あるいは視認できる油膜を生じさせるほどの量で排出してはならないと定められています。また、視認できる油膜の発生を除去する分散剤、洗浄剤、化学物質、あるいはその他の材料や乳化剤を使用してもなりません。

この許可において、船舶は技術的に不可能な場合を除き、すべての機械設備や機器にEAL(環境配慮型潤滑油)を使用することが義務付けられています。こうした機械設備あるいは機器には、周辺水域に油を排出する可能性があるスターンチューブ、ワイヤー、2ストローク船外機が含まれますが、これらに限定されません。

水面の虹色に輝く油膜を確認することによって油流出の存在を検知できます。「油」という用語は、石油(例:原油)と非石油(例:植物油)の両方に適用されます。これは一般的に「油膜ルール(sheen rule)」と呼ばれますが、このルールは油膜を生じる製品に対してのみ適用されるわけではありません。

VGPは環境配慮型潤滑油について、「油膜ルール(sheen rule)」の下で有害であると定義される量の排出を認めていません。

有害である可能性のある量とは、以下に該当しないことを意味します。(a) 適用される水質基準に違反する、あるいは (b) 水面または海岸線に沿って皮膜や油膜が出現する(水面に虹色の膜が出現する)もしくは汚れが出現する、または水面直下や海岸線に沿ってスラッジや乳化が出現する。

排出される油に分散剤や乳化剤を添加して上述の状態を回避することは禁止されています。こうした種類の放出はすべて、「油膜ルール(sheen rule)」に従ってNational Response Centerへ報告しなければなりません。それができない場合は、沿岸警備隊かEPA(米国環境保護庁)に報告します。

ベースオイルは不溶性であることから、潤滑剤に一般に使用されるベースオイルの大半は、水に放出されると水表面に皮膜、油膜、汚れをもたらすか、スラッジや乳化が水面直下に堆積する可能性があります。

稼働状態が正常であれば(例:稼働中の設備からの漏れが最小限である)、油膜が生じる、あるいは表面皮膜が残る可能性のある製品を使用しても、影響が観察されることはほとんどありません。しかし、機械設備の故障によって大量の潤滑油が海洋に漏出した場合は、油膜や皮膜が観察される可能性が高く、船舶事業者が設備の異常に気付くことになります。

油膜が発生する潤滑剤を選択すれば、船舶事業者は漏出と報告義務の発生を視認できます。また、設備の一部に故障が発生して修理が必要である可能性に気付くことができるというメリットもあります。したがって、「油膜が生じる」可能性のある潤滑油をVGPの対象となるアプリケーションに使用することは納得のいくことです。

水に混じると沈降する高分子量ベースオイルを含む潤滑油の場合、水面に油膜や皮膜を残さない可能性があります。しかし、こうした潤滑油は分子量が高いため、生分解の速度が遅くなる可能性があります。したがって、VGPに基づくEALの定義を満たしません。

油膜を発生させないものの、水面に皮膜や汚れを、あるいは水中にスラッジや乳化をもたらす可能性のある潤滑剤を選択すると、万一排出された場合に義務付けられた通りの報告が行われなければ、船舶事業者はその不履行について告訴されやすくなります。

故障しても潤滑剤の大規模なこぼれが発生しない設備の場合(例:ワイヤーロープ)、油膜を発生させる製品を選択するメリットはありません。この場合、船舶運航者は水面の油膜によってこぼれを把握することはなくなります。したがって、油膜を発生させない製品の使用が望ましいということになります。

添付ファクトシートに沿った許可全文はEPAのウェブサイトhttp://water.epa.gov/polwaste/npdes/vessels/Vessel-General-Permit.cfmでご確認いただけます。sVGPのドラフト版はこのウェブサイトでもご確認いただけます。

詳細については、最寄りのカストロール担当者にご相談ください。

1. http://www.epa.gov/npdes/pubs/vgp_permit2013.pdf
2. 製品が上述の分類のいずれにも適合しない場合、EPAが規定した生分解、生物蓄積、毒性の基準に適合すれば、環境的に受容可能と区分されます。

  • 「生分解可能」として区分されるには、潤滑剤は、溶存有機炭素の70%以上を除去するか、理論的二酸化炭素の60%以上を生成するか、28日以内に理論的酸素消費量の60%以上を消費するかのいずれかが実証された、1つまたは複数の構成物質を75%(w/w)以上含まなければなりません(0.10%を超えて存在する規定の物質のみを評価)。生分解可能性を実証する上で許容される試験手法には以下が含まれます。経済協力開発機構(OECD)試験ガイドライン301 A-F、306(海洋)および310、ASTM 5864、ASTM D-7373、OCSPP Harmonized Guideline 835.3110、国際標準化機構(ISO)14593:1999。潤滑油の配合については、上述の生分解可能性要件に適合する必要のないものは配合のうちの10%(w/w)とし、生分解不可能であってもよいもの(ただし、生体内蓄積性がないこと)は5%(w/w)までとします。残りは本質的に生分解可能でなければなりません。グリースの配合については、上述の生分解可能性要件に適合する必要のないものは配合のうちの25%(w/w)とし、構成物質は本質的に生分解可能または生分解不可能のいずれでもよいが、生体内蓄積性を有してはなりません。本質的な生分解可能性の実証に許容される試験手法には以下があります。OECD試験ガイドライン302C(28日経過後に>70%の生分解)またはOECD試験ガイドライン301 A-F(>20%であるが28日経過後に<60%の生分解)。
  • 「生体内蓄積性がない」とは、潤滑剤の海洋環境における、試験手法OECD 117および107を用いて算出した分配係数がlog KOW<3 or >7であるか、その分子量が>800ダルトンであることを意味します。
  • 「毒性が最小限」とは、物質が急性(短期)毒性試験または慢性(長期)毒性試験のいずれかに合格しなければならないことを意味します。急性毒性試験は3つの、慢性毒性試験は2つの栄養段階で実施しなければなりません。海洋試験手法と淡水試験手法はどちらも有効です。製品は、完全に配合された製品およびその主要な化学成分の試験を行うか、かかる配合内の個々の化学成分の毒性について試験するかのいずれかによって評価することが可能です。

3. OECD 306製品レベル試験での測定に従う
4. OSPAR基準で成分の生体内蓄積性の可能性を評価
5. ISO 10253/ISO 14669での測定に従う